ケニー・ドリュー バイリクエスト
もう30年近くも前になるだろうか
とある
神田の質流屋さんに顔を出すのを日課にしていた頃があった
ロレックスの中古が7万円位で買えたり
ビデオデッキや音響系も破格値で購入できるので
週末は裏通りにも関わらず人だかりができる有様だった
二代目の若大将とはもうすっかり仲良しで
「安売りの秘訣」をこっそり聞いた事があったが
寝る場所の確保のためには
仕入れ在庫を常に売り尽くすしか手段が無いとかで
私は妙に感心した覚えがある・・
音響系の一角に
何故だか業務用CDラックが置いてあり
殆ど新譜のCDが毎日の様に入荷する
私はバイクを運転しながらこっそり聞くための
SONYのプレイヤーを同店で新品半額!購入しており
主に邦楽新譜を中心に購入していた
ある日
目に留まったのはこのジャケット
JAZZを聴かない訳では無かったが
このアルバムは2~3度聴き流してだけで
ジャケット同様の軽いタッチ(当時はそう思った)にすぐ飽きてしまった
埋もれていたアルバムが陽の目を見たのは数年後
掘り出したのは当時音大に通っていた彼女だった
必須科目のイタリア語に嫌気がさしていたのだろう
やがて何度もこのアルバムを聴くうちに大学を辞めてしまった・・
思い出すのは彼女との真夏の日比谷野音
ハンクジョーンズとのダブルピアノの幕が上がったのは既に夜8時・・
6時間もビールを浴びながらこの瞬間を待ち続けた私たちは
天に向かって歓声を上げた
狼の様に遠吠えする私の口に飛び込んできたのは・・大粒の雨
土砂降りの雨が降り出し
場内のインフォメーションの声をかき消す
「本日の公演はこれにて・・・
再び
このアルバムが掘り出されたのはつい先日の事
今更ながらに聴くと良いなぁと思う
昔に「軽いタッチ」と感じたのは
バブリーの頃に日本の企画で制作されたせいでの
「万人に馴染み易く」という売りたい企業戦略
重苦しい白黒のジャケットが全盛のJAZZアルバムのデザインも一新し
誰もが手に取って見てしまうようなコンセプト・・
このアルバムが引き金となって
音大を辞めてJAZZ歌手を目指した彼女は
私の元を離れてJAZZのボーカルスクールへ通い出した