真夏の夜のJAZZ

もう20年も前の話
 
生きてきて一番幸せです
14才のゴールドメダリストがおしゃまなコメントで日本中を沸かした夏・・・
 
 
覚えているのはその晩のうだる様な暑さと
新宿の喧騒からちょっと外れた
けだるい地下への狭い階段・・
 
会社帰りにふらりとJAZZのライブハウスを覗いたのは
『真夏の夜のJAZZ』を気取ってみたかったからかもしれない
 
酔っちまってアーチストも曲目も記憶に無いのは
場も読めない能天気のピアノの所為だったからだろうか
今更ショバ変えに歌舞伎町のカーニバルって時間じゃないし
六本木ピットインじゃ家に帰り着ける自信もない・・
 
当ても無く甲州街道をぶらぶら登りだす
酔っても紳士毅然のつもりの私はダブルスーツでタイは緩めない
既に午前様でタクシーも疎ら・・
 
ふと見ると公衆電話が沢山並んでいる
ちょっと人恋しくて立ち止まる
 
あの子はこんな時間でも優しい声で迎えてくれるかな・・・?
 
私の折角のイケナイ思い付きを遮るように
姦しい声で捲くし立てている女の子がいる
顔は見えないが東洋圏の女性では無さそうだ・・
 
私が横を通り過ぎようとすると振り返った
(おお!もの凄い美人!ラ・イスラボニータのマドンナ並み)
紅毛碧眼の彼女は捲くし立てながら
奇妙さ仕草を繰り返す・・まるでブロックサイン?
 
私を救いを求める目で必死で見ている・・・
 
酔ってても機転の利く私は彼女の電話にテレフォンカードを追加してあげる
ちょっと会釈して立ち去ろうとすると・・
 
マッテ!イカナイデ!
 
国際友好親善大使の私は当然通話が終わるまで待ってあげる
 
オトモダチ!ナッテクダサイ!
 
はぁっ・・?
 
聞けばスペインバルセロナからの留学生
安全な日本に来て見たが殆ど知り合いが居なくて不安らしい
だからお友達にナッテクダサイ・・なんだと
 
然し上記3行を解読するのに20分近くかかる
何せ私の片言の英語は全く通じない
彼女はスペイン語しか話せない・・互いに身振り手振り
 
(求めてるのはオトモダチじゃなくてヨージンボーじゃなかろうか?)
 
どうも現在位置が分からない彼女を
在日数年の学友が車で迎えに来てくれるようだ
 
取り合えず電話番号を交換・・
(明るい場所だしヤヤコシイのが増えると困るので私は速やかに退散・・)
 
・・・
 
やったねー金髪美人!(狸じゃないゾ)
 
翌日から早速電話が掛かって来る・・然し・・
 
これが厄介なんだな
身振り手振りが如何に大事な意思疎通手段か思い知らされる
 
何て言ったって彼女の言っている言葉の一言も理解ができない
 
待ち合わせしようにもこちらの言葉の一言も通じない
こちらの英語ったってドランカーイングリッシュの断片だもの余計通じやしない・・
 
そうして私にとって宇宙語に等しい留守電も疎らになり
やがて絶えた・・
 
残念・・
 
国際友好大使失格・・
 
 
mmm まぁそれだけの話だ
 
 
こんな暑い夜だから
ちょっと昔を思い出しただけさ
 
許されよ諸兄方々