S君の場合

S君の彼女が入院した
大きな病気では無いのは予めに聞いていたので

何も慌てて行かなくても良いかなぁ・・

気にはなるのだが
急に駆け付けると足元を見られるようでどうも塩梅が悪い
何やらかんやら理屈を付けていたら
やっとこ病室を訪ねるまでには約一週間が経過していた

流石に怒ってるかなぁ・・

相部屋の病室を見つけるのは容易だった
引き戸を開けて恐る恐る中を覗くと
手前のベッドの縁に女の子が座っている・・
(おっとカワイイ子じゃん!)
女の子の目線の先にはS君の彼女がいる
S君を見ると上体を起こして満身で喜びを表してくれた・・

然し
S君の後ろめたさは訪ねて来るのが遅かったからだけではない
手前の可愛らしい女の子に目が釘付けになった事にも・・
悟られたら尚の事バツが悪い

幸い彼女は気が付かなかった様子で
貯め切っていた話題・・
それはもうまるで機関銃の様に
一気に手術の経過やら寂しかった思いの総てを吐き出した

話の途中で泣き出したのは
何もS君が来てくれたのが嬉しかっただけでは無い

心細かった彼女に優しくしてくれたのは同室の女の子だった

折角仲良しになったのに・・
昨夜その子が急死したの!

指さした先にはさっき女の子が座っていたベッド・・

気が付いたら
誰も出て行った様子も無いのに部屋には自分達二人しかいない・・

俺・・さっきそこで

S君は言いかけてやめた
可愛い女の子に目を釘付けにしたS君を
彼女が詰らなかった理由をも瞬時に察した



当然俺は幽霊なんて信じませんよ!

でもねぇ・・
あの時見た女の子の事は何だったんだろうかって
度々思い出しますね

そう言ってS君は笑った