好々婆

近所のこじゃれたアパートの話

現在の所へ越して来てから
毎朝位に見掛けた「一大イベント」

明るい一階の角部屋からお婆ちゃん御出立のお成り

年齢はもう誰が見たって
90オーバーエイジ

玄関側に何の不都合があるのか知らないが
必ずベランダ側からご出発

ベランダと言っても殆ど縁側の様相で
地上までの間にもう一段・・
何方かの造作で
僅かな一歩ずつの下りで降りれる様に
細やかな工夫がされている

それにしても毎回大袈裟なお出迎え。。

ケアワーカー達?
皆が笑顔で諸手を差し伸べている・・が

そこにいる誰もが「身内」でない事を暗に匂わせている・・


そして「来たるべく日」


部屋はここ暫く
主が不在なのを通り掛かる人達に訴えていた

明るい角部屋・・
お洒落な出窓はがらんとした室内を覗えた。。


一か月もしないうちに
新婚さんと思しきカップルが越して来た

感心する程にセンス良く飾り立られた出窓

そして絶対親達は反対だったろうな・・位の若い二人

一か月も経たないうちに
可愛い出窓のカーテンは消えた

朝日に照らされて明るい出窓・・

また次の若い二人も一月経たずに居なくなる

そうしてまた・・次も



今は折角の明るい角部屋なのが
出窓は締め切った真っ暗な部屋を強調していて
喪に服しているようだ


お婆ちゃんはまだ部屋に


棲んでいるのだろうか..