póʊltɚgὰɪst

あれはもう40年程も前の事
 
高校の同級生
W君の家は渋谷の外れにあって
度々バイトの『渋谷の雀荘』帰りに泊まりに行ったりした
 
雀荘は客さえ居れば商売だもの
朝までの隠れ営業は厭わないのだが
泊まる約束の私は深夜訪問の『ご迷惑』が少しでも緩和される様
センター街を只管走り抜けた
 
渋谷と言えども当時のセンター街
駅周辺からちょっとでも離れようものなら
点々の街灯に照らされた暗い閉店後の商店が並ぶだけ
 
私の走り抜ける風圧で閉じられたシャッターがガラガラと鳴る・・
人気の無さがちょっとした怖さを呼んで足を尚早くさせる
 
やがて息が切れた頃に『彼の家』が見えてくる・・
 
『訪問』の合図をどう決めていたかは記憶に無い
然し息も整わないうちに口を衝いた言葉を覚えている・・
 
その後どうなった?
 
実は彼の家には
『自室に居れない事情』の女の子がほぼ連続して泊まりに来ていた
 
彼の母親の飲食店を手伝っていたその娘は
明け方アパートの自室に帰り
ドアを開けると
不意に部屋中の細々としたものが彼女目掛けて飛んで来たのだそうだ
 
そりゃ痛いナァ・・
彼氏かなんか隠れて投げてたんじゃないのか?
 
どうもそんなんじゃないらしい
泣きながら家に来たのはその朝が最初で
お袋も同じ事言ってたけどね
 
・・・
 
翌朝は気のせいかなって
本人も笑って帰って行ったんだって
それでも部屋を開けた瞬間・・
 
飛んできた?
 
ドンっ!って
それこそ目も開けられない位だったって・・
 
そりゃ何の仕業かな?
 
明け方ったってもう既に外は明るい時期だし
お袋も後から見に行ったらしいんだけど・・
 
・・・
 
部屋の乱雑さが普通じゃ無かったって
その・・物を選んで飛び散らせた様子じゃ無いって言ってた・・
 
幽霊かね? (当時ポルターガイストという言葉を知っていて使ったか記憶に無い)
 
それで相談なんだけど・・
 
・・・
 
その子の部屋で一晩独りで居させてもらう約束をしたんだよ
 
・・・
 
もし俺に何かあったらさ
『この件』の証言を頼みたいんだよね
 
・・・
 
・・
 
 
上記の経緯は
ここまでを本当に昨日の様に覚えている・・
 
・・が然し・・
 
これ以降がどうなったのかが全く記憶に無い・・
 
W君は半年後には無事に高校を卒業したし
私もその後『センター街』を駆け抜ける事は無かった
 
今でも
何でそれ以降の記憶が無いのか
たまに思い出しては自問自答してしまう
(記憶力には人一倍自信があったのだが・・)
 
 
実は・・
 
記憶に残らなかった位の・・
 
 
 
・・まぁそんな事ありはしないか。。