元キャンプ場から連れ帰った霊

久しぶりにちょっとだけ怖い話


以前に元カノから聞いた話


秋深いある日の事

彼女は以前から計画していた一泊ドライブ旅行に向かうべく
兄貴と一緒にキャンプ道具を車に積んで出発した


道が混む事も無く順調に車は進む

その晩の宿泊地であるキャンプ場に着いたのは既に夕方だった


所が・・

ガイドブックに載っていたそのキャンプ場はどうも人の気配が無い
見ると入り口にはロープが張られ立ち入れない様にしてあるようだ

山道のどんづまりにある為に今更場所を変える訳にもいかない・・

様子を見てきた兄貴が言うには中は何の問題も無いようだ

日没と競争するようにテントを設営し
簡単な食事の準備を始める・・

そこへバイクに乗った青年が1人やってきた

挨拶をきっかけに3人で火を囲んで食事をする事になる

『どうもここは去年閉鎖されたようですね』

広い『元キャンプ場』に3人だけ・・

取り留めなく世間話をしていると
数十メートル離れた入り口の小屋付近に人がいる

釣り人でしょうかね?

微かに残った明るさで笠を被っているのが判る・・

確かにキャンプ場の外れには川が流れている
然し何の照明も点けている様子は無い

変ですね・・

次第に辺りは暗くなり小屋も見えなくなる・・
話題も変わりやがて『釣り人』の存在も忘れてしまった

その晩バイカーはソロテント
兄妹は3人用テントにもぐりこみ其々は寝付いた


深夜に彼女は目が覚める・・

隣で寝ている兄貴が盛んにうなされている・・

揺り起こしてみるとテントに何か入り込んで来たと言う

怖くなり2人でまんじりともせず朝を迎えた


まだ仄暗い早朝にバイカーはソロテントを畳んでいる

参りましたねぇ・・

一晩中テントの周りを歩いているモノがいて全く眠れなかったそうである

慌てて3人は撤収開始
逃げるようにして元キャンプ場を後にした・・
小屋の辺りを通る時に昨夕の『釣り人』がいた場所は
とても人が立っていられない所だった事も判明


そしてその晩の事


兄貴は1人で借りているアパートへ帰った

部屋には母親と彼女の2人だけ・・

実は昨日ね・・

彼女は昨晩の体験を母親に語る

まぁ怖い事!

半信半疑の母親といつもの様に布団を並べて眠りに付く・・


深夜に目が覚めると母親が珍しくうなされているようだ・・

兄貴のうなされていた姿とオーバーラップされ彼女は覚醒


『オマエタチハナゼココヘキタンダ』


うなされた母親の口から飛び出した恨みの言葉は

紛れも無くただれた男の声だった・・