友人のツール・ド・災難

先日の奥多摩釣行に一緒に行った友人の体験談


初めて見る奥多摩の渓谷や奇岩に歓声を上げる我家族を見やって語り出した話・・


20年程前に彼は現在の会社に入社

不慣れの仕事の合間の僅かな休みを有効に使おうと
当ても無く釣り道具を車に積んで山に向かったそうな

保谷(現西東京市)から既に長野県の県境を越え
林道を慎重に走行していた時、彼に災難が襲った・・・

タイヤがバーストしたのである

予備タイヤを持ち合わせていなかったばかりか
所持金も僅かしか無い
しかも当時は携帯電話なぞ持ってはいない・・

やむを得ず走行を再開したがそこは砂利の林道である

方向転換もままならず
ついに長野県の小さな村落に辿り着いた・・・

公衆電話でjafを呼んだが今度は無理な走行が祟り
エンジンが掛からない・・・

やっと来てくれたjafの担当者に車を預ける羽目になったのだが
今度は交通費が無いのである

不幸中の幸いか車に自転車を積んでいた・・
アチェンジは可能だがただの通勤自転車

彼は無謀な賭けに挑戦した・・

翌日の出勤に間に合わなければ殺される!
悲痛な願いと共に彼の『ツール・ド・災難』が始まった

直線距離で約150km

標高差は1.500m程だ
基本は下っていく訳だが途中に上りの峠もいくつもある・・

天下る疾走に途中のキャンプ村から歓声が上がる
(何かのイベントだと思われている)

時間は昼過ぎだが翌日の仕事に間に合うのか?

結果彼は家に10時間後に家に到着

途中寄った『吉野家』では
全身泥まみれの彼の格好を見て従業員、客の全員が凍ったそうだ


『若かったからね』


今ではそんなガッツがあったなんてとても思えない風貌だ・・

熊が出そうな林道を通勤自転車で疾走する彼に出くわした人達の
仰天する様を想像すると只笑うしかないのである・・・