ダイバーへの警鐘

一昔前に起きた事
とある女性が海外旅行の際に体験ダイビングを申し込んだ
インストラクターは日本人だし
珊瑚の海は限りなく美しく
ここで申し込まなければ絶対に後悔する事は間違いない

参加者はインストラクターを含めて5人
全員が日本人だったのも僅かに湧き上がる不安を搔き消してくれた

ポイントまでは
現地人のプレジャーボートで向かう
参加者の殆どが初ダイビングだったけれど
事前の簡単なレクチャーが効を奏したのか
トラブルも無く其々が期待した夢の世界へ・・

至極の時間はあっという間に過ぎて
インストラクターに促されて全員が海面へ浮上

あれ・・?

若干は流されたとは言え
待機している筈のボートがいない・・
あらゆる方向を見渡しても・・ぽつんと海の只中

インストラクターはここで慌てずに皆に寄り添って一群となる様告げる

そして誰も思ってもいなかった漂流が始まった・・

最初は何かの手違いだと思っていたから
世間話やら其々の地元の話

笑顔が出なくなる頃から
話が途切れ途切れに・・

そうしたら皆で歌でも歌いましょう!

インストラクターの適切な判断で皆が元気を取り戻す
それでも体が冷えて疲労が増してきた頃には
知っている歌も殆ど無くなってきた・・

件の女性がやっと思い付いて昭和枯れすすきを歌い出す・・

寂~しさに負けた~
そうよ世間に負けた~

それ・・やめましょうか

インストラクターが制止する・・
そしてまた沈黙。。

気が付けば波が高くなってきている
そしてもう陽はとっくに傾いて・・

その時
絶望の確信を深めていた皆の前にいきなり帰路で通り掛かった漁船が!

・・・

インストラクターは吼えた

何故ボートは待っていなかったのか?

きょとんとして地元民は答えた

約束の時間に上がって来なかったから・・

確かに歓喜に溢れる観光客達に応えてしまったが
それにしても命に係わる事だし!

結局
国民性の違いもあるのだろうが
「彼」には早く帰らなければならない御事情があったようで・・

・・・

彼女は私に話しながらここで急に声を潜めた・・

その翌年ね・・
全く同じ場所で日本人観光客が漂流してね・・
確か全員が亡くなったのよ
新聞やテレビで大騒ぎだった話だから知ってるでしょ?

・・・

私は頷くしか無かった。。


暫くしての話

沖縄諸島出身の当時の彼女の自慢は
何度も遭遇した台風の目の様子と満天の星

ダイビングスポットで有名だよね
俺もいつかは・・

ダメ!
絶対ダメだからね!

それはまた何で~?

サメにヤラレルから

はぁ?
そんな事聞いた事無いけれど

観光事業の為に徹底的に伏せているのよ
毎年何人も行方不明者が出るけれど
殆どがサメにヤラレテる
度々喰われた体の一部が見つかるけれど
全て公表せずに穏便に隠してしまう・・

それじゃ遺族の方も納得しないんじゃ・・

だから
ゴネル遺族にはそこそこの現金が渡されて箝口令が布かれるのよ

それでもなぁ・・

死んだ人は帰って来ないし
幾らかにでもお金になった方が良いでしょ?

じゃ
貴女の地元じゃサメがヤバイって周知だってこと?

当然よ~
だから島で潜るのは馬鹿だって事!

そこまで言い切れる?

だって私の父親は観光協会の重鎮だからね
莫大な観光収入は島では必需なのよ
ダイバーがサメに喰われる話なんか広まったら大打撃でしょ

・・・

まぁ
上記二話は実話です

ダイビングをされる方は頭の隅っこにでも置いておきましょうね。。