小島武夫さん

今から40年以上も前
高校二年生だった私は
毎週末の様に都心の料亭で夜を徹して雀卓を囲んでいた

母子家庭であり
既に働かなければ学業も継続できない・・
当時の一般的なバイトは主にウエイターなのだが
高身長は接客商売の障壁となる為に面接さえも儘ならない
然も元来「時間給」なんて馬鹿らしくて労働意欲なんざこれっぽちも・・

かくして私は鉄火場に身を置く事になる
年間365日の300日以上は学校帰りに渋谷宮益坂雀荘のカギを開ける
標的はメンバー足らずの会社員set
1人が残業で来れないなんて嗅ぎつけたら既に「かっぱぎ」の条件は整っている・・
年末の勝率集計で1~2着率98%だったから
それこそ殆ど怖いもの知らずの無敵状態だったと言えよう

つるんでいたのは麻布学園の不良共
その後連中は全員が現役東大合格を果たした訳だから
「苦界」に身を沈めたのは結局私だけだった

さて
件の週末の御座敷卓
何故こんな所にいるのかと言えば
ここのオーナーの息子は私の同級生
所が「無敵人生」の筈の私も苦手がある・・
その年「近代麻雀」の成人の部で全国8位になった華僑の同級生と
(大学の部はあったけど高校生の部は無かったからね)
ここんちの(料亭)息子と私はほぼ同格だった
鼻持ちならない「息子」の自慢は度々小島武夫と卓を囲む事

今隣の部屋にいるから挨拶してみるかい?

ヤクザじゃないんだから
挨拶したからって満貫を見逃してくれる訳じゃねーだろ

大体テレビに出まくってるんだから
立派なゲーノージンだろが?

有名人になっちまったら
稼げる「甘い相手」が敬遠する・・
本当のホンモノは売名なんかしない筈さ

粋がってはみたけれど
自分以外に「守るモノ」・・要するに家族が出来ると
伝家の宝刀にも曇りが出始める・・

結局世の中で一番強いのは「金持ち」かね。。

分かりきったことを今更ながらに悟ったのは
既に子供のいる年齢になってからだった

その後も
大手企業の社長さんやらとも卓を囲んだが
彼等は一様に持っているモノが違う
ヘタでも負けないんだよねコレが・・

本来持ち合わせているモノとは
意地や信念に近いものなのだろうか

迷わず自分を信じ込むことが肝要なのかな・・とも最近思う

小島武夫さん
どんな思いのどんな人生だったんだろうか
私の青春時代に阿佐田哲也氏と並んで少なからずも影響を下さった

決して満足できる人生じゃ無かったさ

そう言ってくれたら口角が上がる
幸せや満足感を感じたらその分呆けると信じて
幾分か速足で残りの人生を駆け抜けようか

ご冥福をお祈りいたします