事故物件
不動産屋の店長だった頃の話
因みに実話
ある朝の事
懇意にしている管理会社からFAXが届いている
空き予定物件の客付け依頼情報だ
●●から出る沿線で駅近、築二年で約30㎡
当時の家賃相場で8万といった所だろうか
所が予定家賃は4万8千円・・・驚くほど安い
何気に備考欄に目をやると「難点有り」とある
ふ～ん 珍しいなぁ・・
私は社員全員を集めて物件の説明を始める
「特殊物件」は客に必ず内容説明をした上で紹介しなければいけない
因みに売り上げ成績を焦ったりして説明を怠ると業務停止にも発展する場合がある・・
各自注意する様に～！
社員の一人がFAXの山から同物件の送り状を見つけた
平素は・・の定型文の上に注意！と大書してある
私は事故内容の確認の為、担当者へ電話を入れてみる事にした
発見されるのが早かったのと
この季節ですからね
幸い匂いは残りませんでした・・
因みに・・この物件専任でお願いしたいんですけど・・
・・・
懇意にしている会社の頼みを断る訳にもいかない・・
やがて住宅情報誌が発売されると電話や来店が引っ切り無しとなって来る
「内容説明」の繰り返しで辟易し出した頃・・
「彼」はやって来た
沿線の大学職員で30代
年齢の割には落ち着いている
内見したいんですけど・・
(案内したくない接客担当者はしり込みする）
大丈夫です 勝手に見てきますから・・
暫くして帰って来た「彼」は残念そうに言った
部屋にはいなかったんですけどねぇ・・
暫く共有廊下で立っていたら三つ手前の部屋から出て来ました
？？？
あっ！すみません説明してなかったですね
実は私見えるんですよ
彼はそう言いながらバッグから数珠の束を出した
別に宗教家って訳じゃありませんけど
向うもこっちが気が付いたのが分かると憑いて来ちゃう箏があるんでね
亡くなったその部屋にいるもんじゃないんですか・・？
大体亡くなった部屋の周辺の部屋にいますね
だって自分のいた部屋じゃ誰もいないでしょ
それって寂しいから・・？
それもあるかもしれないけど自分を理解して欲しいんじゃ無いですか
まぁ人恋しいとかあるかもしれないですね
さっき三つ手前の部屋って言いましたけど
出て来た時ってドアを開けて・・？
いやいや
ドアを抜けて出て来ましたね
因みに壁を突き抜ける事も出来るから
自分の部屋にいたらいきなり壁から目の前に出てきたりします
じゃあ「その部屋」を誰か借りたら
そこにも当然出没するって理屈ですか？
きちんとしたお祓いが出来ていないと
暫くは周辺に留まるかもしれませんね
・・まぁ今回は周辺にいたのを確認したんで見送りとします
・・・見えるってどの位の頻度なんですか？
例えれば・・
町中で猫を見かけますよね
野良にしても飼われてても度々
まぁあんな感じですかね
・・・もう一つ良いですか？
はい？良いですよ
・・・なんかさっきから私の後ろを気にしていませんか？
いやいや気のせいですよ。。大丈夫・・大丈夫・・
・・・・
