立ち尽くす女

あれ・・?
靴下もうダメねぇ
 
明日ちょっと見に行ってみようか・・
 
うん・・!
 
嬉々としている娘は
折角行くんだから
ちょっと可愛いTシャツ位はついでに買って貰える事を知っている
 
それに引き換えmamaちゃんは・・
 
もういなくなってるといいけどなぁ。。
 
軽くため息を吐く
 
 
JRのガードに程近い
その「衣料量販店」は
梅雨の谷間の明るい日差しを浴びながら
賑やかな店内の様子を外に窺わせている
 
のんびり屋の娘が
自転車を止めるのにもたついている間に
mamaちゃんはさっさと店内へ入ってしまう
 
それは初夏の日差しが厳しいからでも
自転車を漕いで
ちょっと汗ばんでしまったからでもない
 
 またあの女が立っていたから・・
 
ちっとも待っちゃくれないmamaを追いかけて
娘が店内を見渡す
姿を見つけるのは造作も無い事
明るいパステルカラーに目移りし出す頃
「置き去りにされた」なんてとっくに忘れてしまっている
 
大きな袋を抱えて店を出るまで
mamaちゃんは「女の事」を忘れてはいない
 
自転車置き場で
中空をぼんやり見つめているその女は
とっくに私が気が付いている事を知っている筈だ
 
願わくば娘や私に憑いて
家まで来てしまわない事を祈るのみ
 
待ってよ!mama!
 
幸いな事に娘は
「その方面」はpapaの血が濃い所為か
「この世」のものしか見えないようだ
 
それにしても・・
 
眩しい位の日差しの中で
誰にも気付かれずに「その女」は
自転車置き場の一角に立ち尽くしている
 
 
ある晩
意を決してmamaちゃんは
娘に「待ってあげない」理由を打ち明ける事にした
 
「置き去りにする不憫さ」と
知って貰いたい気持ちが少しだけ勝ったのだ
 
え"~っ! こわ~い・・
 
・・・
mamaちゃんは
娘との「恐怖」の共有に成功してちょっと内心ほくそ笑む
 
 
 
けれども私は知っている
 
娘はみえないモノの存在なんか
何とも思っちゃいないし
 
あの可愛い
パステルカラーの服達が待っている限り
娘には「幽霊」なんかちっとも怖くなんか無いって事を
 
それに大体
 
次に自転車を止める時には
とっくにそんな事なんか忘れちまってるさ