クレーム

某大手企業に
会社の将来を背負って起つと
誰しもが存在感を認めるエリートが二人いた
 
ある時
会社に一大事が発生する
一級河川沿いに建てられた製造工場から流れ出た工場排水が
川の水に依存する下流の住民の生活域を汚染
 
国の調査結果でも
工場排水が「公害」の大元と判断が下された為
会社側では急遽地域住民達との話し合いの場を持つ事に・・
 
切れ者でもあったエリートの一人「A」は
会社側が準備した「集会所」へ取り急ぎ赴く事になった
 
住民側との話し合いは当初の予想通りに収拾がつかず
長期戦の様相を呈してきたのだが・・
 
実は
件の「A」は仲裁役に抜擢された時から面白くない
心中には「こんなくだらん仕事」と思う気持ちが渦巻いていた
「会合」は回を重ねる毎に怒号に溢れる様になり
紛糾の原因が主に「A」の不遜な態度によるものだとの注進が本社へ飛び
ぶったまげた会社側はエリートの「B」と首を挿げ替える事とし
急遽「集会所」へ向かわせた
 
その後の「B」の仕事は目ざましかった
被害者の家へ一軒ずつ通い只管に頭を垂れ謝罪して回り
誠意溢れる彼の行動は
固く閉じ籠もった被害者達の心を徐々に融解していった
 
それはやがて次なるステージ「示談交渉」へ繋がる事となり
会社側は胸を撫でおろしたのだった
 
・・・・
 
 
室は問題はここからである
 
果たして「A」と「B」の二人
貴殿の人生だったらどちらを選択するか?
 
或いは貴女の息子、
貴女の連れ合いか父親だったら?
 
日本人的思考だったら多分に「B」の人生を選ぶだろう・・
 
然し結果はこうなった
 
 
その後
「B」が担当した「公害問題」は
後の教科書にも掲載され
誰もが知りうる集団訴訟事件と発展し
平成の世になっても解決し切ってはいないのである
 
担当者「B」はそれでも
その他の誰と比較したとしても
彼より秀でた「問題処理能力者」はいなかった・・
 
結果として
彼はあれほど期待された出世株であったにも関わらず
「適材適所」に嵌ってしまった為
その後の出世も本社への返り咲きも叶わぬ夢となった
 
さてと「A」
彼はその後出世街道を驀進する
私が聞いた時には既に副社長にまでなっていたから
その後順当にいけば周囲の予想を裏切らずCEOか会長位にはなっているかもしれない
 
・・・・
 
さてと
 
美徳にも例えられる「判官贔屓」の日本人の諸兄方々
 
貴方自身だったりあなたの身内だったら
「A」と「B」どちらが良い?
 
え”っ?
お前だったらどうだって?
 
う~ん若い頃は迷わず「B」だったけどね。。
 
 
(因みに上記の話は実話です)