雪禍

朝方まで降った雪は
明るくなりだす頃には猛烈な風雨となっていた
 
黎明の中
何人かが国道の車道まで乗り出して「交通整理」をやっている
対象は一般車に対してでは無く
国道合流の際に一旦停止してしまうと
2度と動かなくなってしまう大型車両を恙無く送り出す為だ
 
然しそれでも停まり掛ける各車両は唸りを上げ
跳ね上げた雪水を「整理要員」の全身にぶっ掛けて去って行く
 
こりゃ 前世の行いが余程悪かったかねぇ・・
 
然し
高みの見物の立場を感謝する私にも
程なく後から「災難」は均等にやって来る事になる・・
 
朝から会社の電話が鳴りっ放し
全員が「通勤不能」「通勤困難」の報告である
 
はいはい 来れる人だけ来てちょうだいね
 
私はもう帰る時間なのだから
動かない「公共機関」や出せない「車」の報告は
土台無意味である
 
「お気の毒」の一言を聞きたい為が如く
尚一層電話は鳴り続ける・・
 
idをチェックアウトするのに
構内を160m先まで歩かなければならない
往復するだけで約30分を要する「やや難」の雪
 
国道に出ると歩道がホワイトアウトして消滅
歩行者は構わず車道の轍を歩んでいる
後ろから車が来ても退く場所さえ無い始末
 
バス停では数人が並んでいる
「通勤不能」の連中から報告を受けている私は思わず声を掛けてしまう・・
 
バス・・動いていませんよね?
 
無言で皆頷く
 
然も駅まで行けた所で電車も「全面運休」である
目的地に辿り着けなくても
「直向な努力」を講じる日本人・・悲しい性(サガ)
 
ここでどう考えても私も「通勤難民」である
然も両膝は腫れあがっていて足首も痛い
先週1週間休んでも完治からはまだ程遠い・・
 
片道4k弱の道無き道・・
絶望の「雪中行軍」が始まる
 
踏まれていない雪の深さは約15cm
轍には土砂降りの雨が5cm平均の細い川を形成
傘は殆ど差せない強風
「牛歩」の如く不安な歩みを刻む・・
 
途中
屋根が大きく鳴る家の前を通り掛る・・
 
倒壊に巻き込まれるのは厭なので歩を速めて前を通る
 
果たして家の中に人は居たのだろうか?
 
雨を吸ったベンチコートは甲冑の様に重たく膝を軋らせる・・
風に煽られて体が傾く毎の激痛
 
やがて家に到着
所要時間約2時間弱
 
まぁ良くぞ帰って来たもんだ
 
もう・・ちょっと雪は勘弁だなぁ・・