深夜の暇人

『彼』は必ず夜中の2時を廻った頃に
カギを返しに私の所へやってくる
 
疲れて弛緩し切った目が
デスクに座った私にやっと焦点を定めると・・
 
決まりきった定番の『ご挨拶』が
緩みきった口から垂れ流される。。
 
『なぁーぁっす・・』
 
なぜ『なーす』なの?
『茄子』なのか『ナース』(看護婦)なのか?
 
焦点がまた外れてしまった眼を
驚いた様に押し広げて彼はかぶりを振る・・
 
彼は奈良出身の北関東在住
 
どうもイントネーションでは無さそうだ・・
 
それでも翌晩にはやっぱり・・
 
『なぁーぁっす・・』
 
・・・
 
悪気はコレッポシも無いのだが
然し段々高血圧爺のカンに触ってくる・・
 
『なぁーぁっす・・』
 
・・・
 
今夜もゾンビは私の血圧を逆撫でする・・
 
ある晩私も疲れていた
こんな時に思いつく事は大体ロクでもない・・
 
『彼』が入室してきた気配
十分に引っ張っておいて・・
 
『おたんこ!・・』
 
・・・
 
『なぁーぁ・・にを言ってるんですか?
 
(しまった!外した・・)
 
深夜2時
 
無言で対峙するゾンビと私・・
 
・・・
 
実は夜中って暇なんでしょ?
 
度々聞かれて
大いに否定していた私だったのだが・・