火事のバー

昔の不動産屋時代の話
 
取引先だった担当者が
六本木のカジノバーへ足繁く通っていた
 
決して私は負けません!
 
コツは何なの?
 
特別に御教えしましょうか・・
 
・・・
 
成程・・簡単な話で倍に賭けていくだけの事だ
 
1⇒2⇒4⇒8⇒16⇒32⇒64
 
彼は確率的に7回連続負ける事は殆ど有り得無い。。と言った
どこかで当たれば殆ど元
また1から賭けなおすという理屈
モットもらしいけどだったら誰も負けたりしないんじゃないの?
 
そんな事より聞いて下さいよ!
 
カジノバーは違法
お客には来て貰いたいがそんなに大っぴらに営業できない
必然的に入り浸る馴染み客同士は大概顔見知りなんですよ・・
 
そんなある晩
ふらっと見掛けないカップルが入ってきた
2人はちょっと酔っている様子でルーレットの許へ着席・・
 
幾らかの札をディーラーに差出しチップを受け取る
ルールが良く分からないのか
初心者的な半々ゲームにチップを恐る恐る張り出した
 
連れの女性の嬌声がちょっと耳障りだ
男性の手元を覗くとそこそこな枚数を獲得している様子・・
 
(ビギナーズラックね)
 
その後暫くは小康状態か
ちょっと静かな様子だったのが
いきなり場が大きくどよめいている・・
 
どうせ赤黒丁半だろう・・
油断したディーラーがボールを投げ入れた直後に
すっかり飽きていた酔っ払い男性は全てのチップを0と00周辺に置いた
 
様子に驚いた店は緊張する
 
マネージャーは電話を片手に急いで裏へ消える
然るべき『組織』へ報告するに違いない・・
 
山のようなチップを抱えたカップルは
店中の羨望と憧れの眼差しを浴びながらキャッシャーへ
 
マネージャーのいない『両替所』は息を呑む・・どうすれば・・?
 
酔った男性は一言
 
預かってください・・
 
はぁ?
 
チップ預かってくれるんですよね?
 
その様な事は・・・
 
預かってくんないんだってさー!
 
ざーんねーん!
 
さざめく様に笑ってカップルはドアの向こうへ消えていった
 
・・・
 
2人が置いて行ったチップっていくら分位だったの?
 
聞いたら数百万円分だったってさ
 
ゲーセンだと思った?
 
まぁ博打場だとは知らなかったんだろうね
 
・・・
 
件の彼はその後
絶対に負けない筈の『黄金率』を外してしまう
有り得ない7回以上の『裏』を引いてしまい
新たに望まない怪しい『金融業』の知り合いを作ってしまった
 
 
まぁ格言を述べるなら
 
驕れる物は久しからず
 
瞽蛇に怖じず
 
そんな所でありましょうか。。