こんな夜だから・・

日暮れとともに風が強くなったようだ
垂れ込める密雲は荒れ模様を予感させる・・
 
どんな天気だろうが私は変わりなくご出勤
重い心で重いペダルを漕ぎ出す・・
 
向かい風に逆らいながら緩やかな坂を上っていくと
やがて国道との交差点が見えてくる
 
停止線には自転車の女性がぎこちなく停まっている
近づいていくとストレッチの効いたジーンズが
これまた美しく伸びて自転車を支えている
 
でも何故だか本当にぎこちない・・
 
私は歩道のゼブララインより前に出てしまう
信号の変り具合を伺いながら
チラッと後ろを・・
 
う~ん 中々の美形ねぇ
 
男たるもの単純なもので
一寸前まで重苦しい天気を呪っていたのに
なんか晴れ間が覗いた様な一服の清涼感
(馬鹿だね)
 
やっと信号が青になり
後ろ髪引かれながらも私は漕ぎ出す
坂を抜け切り風も建物に遮られて
タイヤが温度の影響で高圧になっている事にやっと気付く
アイドル距離も長く快調に飛ばす・・
 
やがて次の信号へ緩やかに減速
 
停止線にはさっきの・・
 
え”っ!なんでさっきの女性がいるのさ?!
 
ストレッチの効いたジーンズを伸ばして
物憂げにぎこちなく信号待ち・・
 
オレっていつ抜かれたの・・?
 
まてまてそんな訳はない
まっすぐ進む道に近道も有り得ない・・
 
ゆっくり女性の脇を抜けながら
顔を・・・
 
覗くのはやめにした・・
 
この信号からは1km以上に及ぶ禅宗の古刹の林
 
狸が度々戯れている事がある
たまには不思議な仕草で私を驚かせたり・・
 
そう・・
 
狸の仕業って事でイイじゃない?
(訳あって人間世界にお買い物?)
だからぎこちなく感じた?
 
それでも流石に次の信号へ行き着く勇気は無かったので
途中で側道へ・・
 
 
こんな夏の夜だもの
 
何が起きたって不思議じゃないさ