因縁
例によって大した話ではない
母がまだ鬼籍に入る前に私に話してくれたちょっと昔の因縁話
話の内容から言って
私の親戚ではあっても多分に血の繋がりは無い・・と思う
さてその家の兄弟達は揃って学業が優秀 (ほ~らね・・だから血の繋がりは無いって)
上の2人は現役で難なく一高(現東大)に入学した
三番目は一番オツムの程度が宜しい
誰もが当然の如く問題なく兄貴達に続くものだと思っていた
所が受験当日に高熱を出してしまい失敗
3人も居りゃそんな事もあるもんさ・・
然し翌年の掲示板にも彼の名前は無かった
どうしたものかねぇ・・
結構無頓着だった親達も
凹んだ三男の様子にちょっとは不憫に感じるように・・・
試しにちょっと診て頂こうか?
思い付いたのは私の母だったのかもしれない・・
功徳のある高僧の方に時間を取って頂く事に
所が話は意外なところから始まった
江戸城が陥落の際
明日は江戸が火の海になろうという時に
悲観した奥女中が城中で胸を突いた・・
その奥女中が命を絶った短刀が子孫である貴殿の家にあるので
存分な供養をされる様に・・
ぶったまげる親達
其々そんな先祖が居た話なんぞ聞いた事が無かったし
そもそも家で短刀なんか見た事も無かった・・
モノは試しで家捜ししてみるか?
家族総出で『ある筈の無いモノ』を探す
親から引き継いだ訳でも無いし古い家だったらまだしも・・
えっ!出てきた・・?
押入れの奥から出てきたのは
まさしく見事な懐剣だった・・
ねぇ・・!それでそれで!?
話の先を急かす私を嗜める様に母は・・
それで・・? う~んそれでどうなったと思う?
・・刀をみがいたー!
バカ!お寺に納めたの
・・・・
やがて彼は身内で2人目の『銀時計』となり
話を聞いた私はますます凹み
自身が
『橋の下から拾われた子』との確信的意識を尚更強くした
注)一高の首席卒業者は『銀時計』を下賜された