食事券

『ちびまるこちゃん』を見ていて思い出した


一昔以上前の話

朝いつもの様に
青梅街道沿いのバス停まで歩いていくと
普段見掛けない女の子が一生懸命時刻表を見ている

(彼氏の家から朝帰り?)

目が合ってしまい不順な思い付きについ動揺する

最寄のJR駅まで歩いてどの位ですか?

そうだね大人でも20分以上は掛かるね・・

私は答えながら列の後方へ
今日も渋滞でバスは中々来ない

やっと来たと思ったら
さっきの女の子は遥か先を歩いている・・

舌打ちをしてバスを見逃し
後から来たタクシーに手を上げる

運転手さん途中で1人拾うよ

いいですよ

女の子が歩いていくであろう場所に先回り
ドアを開けてもらい身を乗り出して車内へ促す

20分強は平時の時間帯
踏み切りの影響で朝は倍も掛かるかもしれない・・

私は謝りながら中野駅で其々の電車へ

所が・・

翌朝もバス停で清楚な笑顔で彼女は立っている

昨日は有難う御座いました

気が付いたらとっても美人だ
当然のようにタクシーに手を上げる私

聞けば週末に引っ越してきたのだそうだ
大手商社のOLさんで1人暮らしは初めてらしい

その後タクシーも気が付いたらいつも東京無線の若い男の子

いつもお2人でタクシーに乗るのを見てまして・・

バス停の手前で迎車のプレートを出して私を待っているそうだ

奇妙な3人の関係が始まった

朝一でお2人を乗せるとその日のアガリが何故か良いんですよ

苦笑するしかない私(朝のタクシー代は経費で落ちない・・)

彼女は車中でいつも二日酔いの私の武勇伝に目を丸くする・・


ある休日の事

我が家の懸案だった大掃除が意外と早く済んだので
思いつきで彼女のマンションへ初めて赴く

良かったらご飯食べに行かないかな?

部屋へ促す彼女・・綺麗な部屋

着替えが終わって2人で連れ立って商店街へ

気の利いた店はまだ開いている様子は無い・・時間が早過ぎる

やっと準備中のすし屋に入れさせて貰う

今日は2人だけ

酒も入って饒舌な彼女・・

店を出る時に商店街の福引券を貰う

ガラガラを廻すのは彼女

大当たりです!

当ったのは別のすし屋の食事券一万円分

・・・

まるで堂々巡りの2人の関係を暗示させる顛末

やがてバス停で彼女を見かける事も無くなり

タクシーのお兄さんも姿を見せなくなった