『断腸の慟哭と嗚咽』  あれは何だったんだろうか・・?

夏は終わりの筈だがまだまだ暑い・・

時期外れだが久しぶりで怖い体験談  (大した事無いぞ!




まだ景気がそんなに悪く無い頃の話だ


30代中盤から始めたウィンドサーフィン

会社の部下を強制的に引き込んだ事もあって
総員ヘタクソながらもそこそこのメンバーを擁していた

毎年夏休みは『本栖湖』に常駐

湖畔まで強引に車で降り込んで水際にキャンプを張る

恒例行事なので別に約束もしていないのだが
三々五々其々の都合でやって来ては勝手に帰って行く・・


その年の集まりは最後のお楽しみだったと記憶している




湖畔に着いてもう一週間も経ったろうか


惰性状態でのんべんだらりをやっているのはI君と私だけ

前半はベンツで乗り付けるバカまでいて大盛り上がりだったのだが
後半は夏休みの残り日数も計算出来なくなっている寂しいアホ2人

その晩私はパジェロのシートをフラットにして眠りにつく

I君は自前のテントでのご就寝


時間はまだ夜10時過ぎ位か


その晩に限って何故か眠れない

酒浸りが悪かったのかなぁ・・

それでも何とか眠ろうと寝返りをうつ




何かが聞こえる・・


細く低く抑えたくぐもった何かが・・


じっと耳を欹ててみる


かすかに女性が泣いているのだ・・


何故?


泣き声は段々大きくなる

抑えきれない嗚咽は件の主の呼吸も妨げているようだ・・


どこから?


私は愕然となる


一番近いテントまで10M位か?


泣き声はもっと近い


私は起き上がって周りを見渡すが何も見えない・・


身内を亡くしたばかりとしか例えようの無い慟哭は更に大きくなる・・


ついに私は車を降りてみる


車の陰で泣いている人を確認する為だ


然し車の周りは誰もいない・・


既に心臓を破かれた様な悲しい慟哭は佳境


すごく近いのに場所を特定できない


やはり廻りには誰もいない・・


気が付くと『慟哭』は私に対してのようだ・・


過去に『御交際』頂いた女性達の顔が頭を巡る・・

各女性達に対しての『悪』の所業が強制的に思い起こされる・・

(多すぎて数え切れず・・)



私はたまらず車に逃げ込み毛布を頭から被る


慟哭はやがて小さくなり


やがて消えた・・


外は既に明るくなろうとしている


私は一番近くのテントにいたI君を叩き起こす


アレは何だったんだろう!


何が?


迷惑そうなI君の返答に私は言葉を失ってしまう・・


・・・


あの断腸の『慟哭』は何だったんだろうか?

誰に対してだったんだろうか?


私?


・・・




不景気は私達の『夏のお楽しみ』にピリオドを打ち

私はそれきり本栖湖はご無沙汰である・・