バブルの残照③ Yさんの場合

思い出しついでにもう一つ


あれはバブル突入時の頃

Yさんは中小企業の事務員だった

当時の私の大事なお客さんの1人だった

酒は飲めない
タバコは吸わない
ギャンブル興味無し
女性にも興味なし?

典型的な真面目人間の独身男性30代後半

ある日突然会社を辞めた

古臭い会社の雰囲気と時勢に合わない毎朝8時出勤に嫌気が差したのであった・・

次の就職先はタクシーの運転手
堅苦しい業務ではない上に本人は至って真面目人間である
手取りも一気に40万円台(当時の話よ)

放って置いても貯金が増える

賃貸では勿体無いなと1,500万でワンルームマンションを購入した

半年ほどして仕事に行こうと準備していたら
いきなり訪ねて来たのは不動産屋である

『査定させてください』

忙しいので断ろうと思ったら・・

ちらっと部屋を覗いて一言

『2,400万でどうですか?』

中古なのに半年で900万も値上がりだ!

早速ローンを精算して売り払う

なんと約1,000万弱の儲けが転がり込む

これは必然的に宝くじに当たったようなものではないのか?

急にYさんの態度が変わった
まるで青年実業家のような面持ちである・・

その後、Yさんの『マンション転がし』が始まった

利ザヤで儲けた分を乗っけて次々高い物件へ買い換える・・

最後に記憶しているのは確か4,800万の物件を購入した時だった

・・・

そしてその後敢え無くバブル崩壊

Yさんはご他聞に漏れず行方不明の1人となった・・

今頃どこかでひっそり生きているかな・・

バブル崩壊以降に苦し紛れに闇金融に手を出してしまった人の多くが自分で命を絶っている・・

現在ほど法律整備が厳しくない時代である


私自身だったらどうだったろうか?

多分自制できた自信は無い・・

同じ道を歩んで身を焦がしたのは間違いなかったろうな・・