『特殊物件』殺人があった部屋?

不動産屋時代の頃の話


怖い話ではない
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一昔前のもうちょっとだけ景気の良い頃の話だ


彼女は念願かなって東京の大学に入学決定

遥々西方から父親と共に部屋探しにやって来た

所が時期も煮詰まってしまい
中々良い部屋が見つからない・・

ホテル滞在も期限が迫っていて
もう屋根が付いていれば何でもok状態での初御来店

(切羽詰った時の私のコネは自慢出来るほどに絶妙なのだ)

中野区で築2年分譲価格4,000万円台のオートロック物件をたちどころに押さえる・・

家賃も管理費込みで約7万円だ
通常ならば10万強はするのでこれは快挙と言えるだろう

有給を取っていたお父さんは焦燥の影が濃かったが
苦労の甲斐もあったせいか喜色満面である

目出度く『仮申し込み』を入れて東京土産を携えてのご帰郷が適った


所が・・

いきなり警察介入である


件の部屋に解約を入れていたのは同棲中だったカップルの男性の方
相手の女性が行方不明なのだ

家族からの届けを受けての捜査中に
なんと同棲相手の『彼女』の他殺死体が東北地方で見つかった・・

問題は部屋で『事件』が起きたのかどうか?
部屋で『起きた』のであれば『特殊物件』である

オーナーは既にぶったまげている

捜査内容は当然公表されては来ない・・

仕方が無いので『仮申し込み』の父親へ電話を入れた・・

経緯を解る限りに詳しく説明

父親は当然即答『キャンセル』だ

所が娘が電話をひったくった!

娘曰く

どんな『惨殺』であってもキャンセルはしません!

(この時点での部屋のキャンセルは
当然大学の新学期の登校に影響必至なのではあるが・・)

何があったとしてもあの部屋は気に入っているんです!

娘の力強い意志に父親も折れてしまう・・


部屋は『入居確定』となり

オーナーは私に『大感謝』

幸いと言って良いかどうか
結局『事件』は部屋では無く旅先で起きたことも後に判明した・・



然し女性は強いね

お父さんもきっと娘を見直したんだろうな