人事

夜中も2時を過ぎると
流石に朝7時出勤の係長達も壊れてくる
 
先刻から話題は
 
ドコゾのケータイショップのおねーちゃんが可愛いだの
何やら新しく出来たラーメン屋が美味しいだの
 
乏しい彼らの話題性では
大した内容ではないゴシップを大袈裟に膨らませる以外に
交歓し合う術が無い
 
明日の朝には期限であろう
始末書、顛末書、業務改善報告書なんか
とっくに彼方に捨て去られている
後は『脳内書庫』に大量に溜め込んだ
謝罪、陳謝の言葉の数々を組み合わせて準備して置くだけ
 
然しお客様への始末書提出期限を破った時の謝罪の言葉とはどんなモノなのだろうか?
 
 
不意に私の前の電話が鳴り出す
 
家庭崩壊寸前の奴らが一斉に私を見る・・
 
察しの良い奴は既に机の下へ潜ろうとしている
神経伝達が恐竜並みのヤツは『警戒警報』にまだ気が付かない・・
 
・・・・
 
私は呂律の廻らない疫病神に
誰と誰が残っているのかを言わなければならない・・
 
已む無く人身御供の
独身者を2人・・
 
電話を切ると騒然となる
指名を受けた2人は
 
みんなありったけのお金を貸して下さい!
 
やがて彼らはタクシーに乗って彼方へ消えて行く・・
 
彼らの着いた所は会社から遥か彼方のスナック
閉店をとっくに過ぎておかんむりのママさんと
テーブルに突っ伏して寝ているM課長・・
 
呼び出し理由は『飲みに来い!』だから
水割りを一杯ずつ不貞腐れたママさんに作って貰って後は沈黙
10分も経ったら2人で課長を担ぎ上げて店を出る・・のだが
お勘定を忘れてはならない
 
5万円丁度です
 
息を飲む2人だがこれはまだ安いうち
 
 
結局翌日課長は知らん顔
 
彼らは迎えに来させられて往復のタクシー代と飲食代を払わされただけ
 
 
やがて不思議な人事が発表される・・
 
仕事が出来ない以前に仕事を知らないN係長が課長になって転勤
 
やっぱりね
独身の彼は何度も飲食代を払わされて既に数十万円じゃきかない出費を強いられていた
 
だから妻帯者は課長になれない訳か・・
仕事の出来ではなくて親元の独身者が一番タカラレて課長への早道となる
 
因みにM課長は今回の人事で北海道のハズレヘ転勤となった
店長だそうだから取り合えず出世?扱いなのだろうか
 
極寒の北海道に
前夜の記憶が全く無い位の酒乱のM・・
そこらでひっくり返って寝ていると
膝枕の膝がどこぞのママさんのじゃなくて閻魔さんの膝だったりしますぞ