『休憩所』

もうずいぶん昔の話だ
 
Y君の友人が引っ越しをした
安下宿を移っただけだから大した事では無い
 
大学からはずい分近くなったので
これからは翌日を気にしないで酒が呑めるぞ
 
っとまぁそんな具合
 
今度は大家は近くに住んでいないらしい
今までみたいに怒鳴り込まれたりはしないだろうけど
まぁ最初が肝心・・
折角だから
2人でささやかなお祝いでもするかね
 
っとやっぱり懲りない輩達
 
Y君は一升瓶をぶら下げて
大まかに聞いた住所を尋ねることにした
 
学園通りの外れのラーメン屋の角を曲がって・・
 
やがて薄暗い路地の奥に
如何にもそれらしいボロアパートが浮かび上がってくる・・
 
建物の名前なんざ見ちゃいない
こんな所に越してくるのはアイツ位のもんだ・・
 
暗い廊下を行く
号室だけはしっかり見る
 
103号室・・
 
前の部屋と同じ様にノックもしないで引き戸を開ける
 
そこには満面の笑顔の『彼』・・・と
 
無表情の『彼ら』・・
 
・・・
 
酒がどうしても進まない・・
 
『彼』のように陽気な気分には到底なれない
 
急の用事に託けてY君は中座の非礼を『彼』に詫びた
 
部屋を出て行くY君を見送る残念そうな『彼』と無表情の『彼ら』・・
 
『今だったらまだ電車に間に合うかな・・』
 
・・・
 
 
それで? それでどうしたの?
 
それっきりさ・・『彼』の所には
 
『彼』には教えたの?
 
そんな事言えやしないさ
 
じゃ『彼』はその部屋にずっとその後も?
 
確か就職しても暫くそこにいたと思うな
 
よくいれたね!
 
そりゃ知ってたら無理だろ
 
・・やっぱり感じない方が良いのかね?
 
あの狭い部屋に6~7人もひしめいていると知ったら・・
 
何でそんなにいっぱい?
 
『通り道』とか溜まってしまう場所とか・・
 
『休憩所』?
 
そうだね差し詰め『霊の休憩所』って所かね
 
見えない方が良さそうだね
 
見えない方が良いよ絶対
 
見えなくて良かった!俺
 
見えちゃって残念!俺
 
・・・
 
(実話にちょっと脚色しました)
 
・・・
 
 
 
最近
部屋を訪ねてきた友人や彼氏が
急な用事で帰ってしまった事って・・ありませんか?
 
原因は
案外貴女じゃなくて・・
 
部屋にあるのかもしれませんね