シャーマン

ウインドサーフィンを一緒にやっていた友人のK君は
幼少の頃から兄貴に頭が上がらない
 
私とて初対面で
『いい年してくだらねー事やってんじゃねーよ!』
いきなり言われてしまう体たらく
 
話には聞いていたが年上だろうがお構い無しで
容赦なく人生の忠告を言ってのける『超ジャイアン級』の彼には驚くばかり
 
すごいね・・
 
でしょ! でも俺弱み握ってるんだ・・
 
(女装するとか?・・)
 
ふふふ・・・
 
 
彼の家には毎月決まった日に『霊能力者』がやってきた
父親以外は所払いとなるので何を話しているのかは解らないが
想像するだに
経営している工務店や家族の未来を『診てもらっている』らしい
 
プロ野球パリーグ現役監督の家の次に訪ねてくる
 
といった以外は別に取り立てて話題にもならなかった筈だったのだが・・
 
・・・
 
ある日兄貴が家に帰ってくるとちょっと様子がおかしい
 
母親が話しかけてもキョトンとして返事をしない
居心地が悪そうにやたらと天井を見上げては目で何かを追っているようだ
 
一同呆気に取られていると
するすると自分の部屋へ・・
 
今度は篭もった部屋から怪しい音が漏れ聞こえてくる
 
K君がそっと部屋を除いて見ると
 
四つん這いになって這いずり回る兄貴の姿が・・
K君には全く気が付く様子は無く
今度は自分の尻尾を追いかける犬のようにぐるぐると・・
 
 
そこへ『霊能者』が定期訪問でやってきた
 
玄関を入ってくるなり
 
おっ! お兄ちゃん憑依されましたナァ・・
 
・・・?
 
車に轢かれた犬を見て可愛そうだと思ったようですな
見事にくっ付いて来ちまっている・・
 
どれどれ私が落としましょう・・
 
すたすたと全てお見通しのように兄貴の部屋へ
 
そして見事にジャイアン復活・・めでたし めでたし・・
 
 
どこが『兄貴の弱みを握っている』なんだか聞きそびれたが
家族全員が『霊能力者』のシャーマンぶりを目の当たりにした瞬間だった
(兄貴はその間記憶が無いので半信半疑)
 
 
 
パリーグの監督はその後も何度も優勝に絡み名監督ぶりを存分に発揮
数々の武勇伝を遺して昨秋 川を渉って往った
 
 
ファンのみならず愛された彼は親しみを込めて『親分』と呼ばれていた・・