梯子を外す 或いは(梯子を外される)

何故か好きで拘ってしまう一言
 
然しインパクトの良い使用チャンスが中々訪れない
 
梯子を外しやがったナァ!コラァ!の瞬間は
多分にそれどころでは無い状況
 
自分の保身も掛かる瞬間だろうし
問題集約に時間も限られていてそんな一言どころでは無い・・
 
だけどこんな情景はどうなのだろうか
 
 
彼女は赤坂の高級クラブのno,1
 
私も普段は紳士的にさっさと切り上げるのだが
その日は気が付いたら店が跳ねる時間
(赤坂は午前0時がお終い)
 
送って貰える・・・?
 
断る術も無いので一緒に男女の色々な思惑が錯綜するみすじ通り
 
何で電話くれないの・・
 
忙しいからね
 
私はアゲハ蝶に電話はしない
生きている世界が違うし花は摘んでしまえば枯れてしまう
 
家はどこだっけ?
 
南青山・・
 
やっと止めたタクシーに乗り込むと
疲れが出たのか私にしな垂れる・・
 
どちらへ?
 
南青山4丁目・・
 
・・一人降りますのでその後は中野までやって下さい
 
彼女の一言の後に私も言葉を追加する
 
急に私の袖を握る手に力が入る・・
 
やがて目的地周辺
 
そこを右・・
 
突き当りを左 (そんなに複雑だっけこの辺り?)
 
大理石のエントランスを誇るマンションの前に停車
 
明日は必ず電話するよ
 
・・・
 
タクシーを降りた彼女は車のドアを塞ぐ様にいきなり屈み込む
 
大丈夫?
 
・・・
 
運転手さんすみません
具合悪そうなので申し訳ない・・
 
つり銭も貰わず慌てて車を降りる
 
どうした?大丈夫か?
 
・・うん
 
彼女の目は遠ざかって行く『梯子』のテールランプをしっかり見ている
 
ちょっと眩暈がしたけどもう大丈夫みたい
 
急に私の腕にしがみつく
 
ねぇちょっと寄ってって・・
 
(くっそーやられたか!明日は出勤なのに・・)
 
あまりにも途中を曲がられて現在位置が解らない・・
 
タクシーはどの辺で止められる?
 
この辺りじゃ絶対無理・・!
 
わざと転んでPKをせしめたフォワードの様に彼女はほくそ笑んだ・・
 
 
なぁ・・
 
髭剃りって無いよなぁ
 
梯子を外された私は観念するより術は無かった・・
 
 
(えーこれはフィクションです 本当です 友人の話です 私の訳がありません)