若者たち 永島慎二

イメージ 1
あれは20才にもなっていなかったまだ青い頃
 
既に調理の世界へ進路を見出した友人と
その勤務先の上司のおぢさまと赤提灯へ
 
おぢさまが奮発して奢ってくれたのはコニャックナポレオン
 
どうしてそんな酒が赤提灯にキープされていたのかは不思議だが
からしてもグビグビ呑んではいけない雰囲気は当時の私でも容易に理解できた
 
どうも若い輩の将来性を祝ってくれていたようだが
何せ私にとって縁の無い厨房話はつまらない
 
暇を持て余してふとカウンターの下を覗くと
 
『若者たち』 永島慎二
 
高い酒を奢って貰いながらマサシク失礼なのだが何気にページを捲ると
ほんの暫く前まで街に溢れていたエレジーの世界がそこにある・・
 
母はよく近所の下宿屋みたいなアパートに棲んでいた貧乏学生達の面倒を見ていた
 
新宿で拾ってきたフーテンに部屋の中の一切を持ち逃げされた某
仔ネズミ一匹に部屋を占有されて野宿を余儀なくされた某
母を慕っていた美人の売れないイラストレーターに心が落ち着かなかったり・・
 
なにやってるの!
 
母に一喝されながらも屈託の無い笑顔の彼らを私は愛していた
何れも共通していたのは悲しいまでの貧乏生活
 
世は『吉田たくろう』や『かまやつ』のフォーク全盛時代の到来を迎えていた
 
・・・
 
気にいったのなら持ってきなよ
 
店のご主人が声を掛けてくれるまで
厨房話はとっくに撥ねていたのに茫々と読み耽っていた私
 
それが一冊目
 
人生に挫折する度に読み返すバイブルとなったが
放蕩生活で敢え無く散逸してしまう・・
 
次に出逢ったのが既に30代になった頃の古書店
 
購入してはみたが時代はバブルまっしぐら
貧乏とは縁も無く読む暇も興味も湧かず私の手元から消えてしまった
 
そして今回購入が3冊目
 
いつの間にか映画化もされていて近年の再版本は『黄色い涙』と表題を変えていた
 
今回は『初心』に還って『若者たち』初版本
 
男は懐古趣味が大勢を占めると伸長が滞る
 
迷いに迷っての購入
 
一回は読んでみようか
 
昔の良き時代に浸っている暇は無い
 
何せ娘はまだ小学生だ
 
まだまだ頑張らないと・・