都市伝説

その日の朝
何故私は地下鉄丸の内線に乗っていたのか
今となっては記憶に無い
 
全く辺りを気遣う所ではない女子高生達の
ともすれば悲鳴交じりの甲高いやり取りをやや迷惑気味に聞いていたのは
著しい二日酔いでバイク出勤どころでは無かったからかもしれない
或いは午前中から憂鬱な会議を控えていたから・・?
 
やがて途中駅から乗り合わせて来た2人を加えて無敵のジョシコーセーは5人に増えた
 
お陰で聞き落とした最初の部分をプレイバック
それでも何の事だか良く分からない・・
 
見たー?!
 
見た見たー!
 
酷くない?あれってー
 
番組の演出でしょう?
 
でも誰も一言も触れて無かったよね!
 
何故映したんだろうねー?
 
追悼ってこと?
 
でも何で明菜なのー?
 
(5人とも昨晩同じ番組を見たらしい・・中森明菜に何か関係が・・?)
 
さしても大した興味があった訳ではない
得意分野とは言えない『芸能ジャンル』からさっさと撤退する事にして
私は短い惰眠を貪る事にした・・
 
 
最初に件の内容を知ったのは
誰かが開いていたスポーツ新聞の見出しだったと思う
 
テレビのワイドショー番組でも
あちこちの会社の給湯室でも話はもち切りとなった
 
踊るマスコミにウェルテル症候群が後追いし
現)文部科学省でも問題となる・・
 
さんざん無責任に煽り立てておいて『後追い』が増えると
慌てたように急速な火消しが始まる
集団催眠やら都市伝説やら否定論が横行しだして
誰にも文句を言わせず鎮火・・消滅
 
『あの時の事』を紐解けば
テレビに映ったと言われる彼女の姿は
集団催眠現象から派生した幻覚と片付けられている・・
 
元気な姿が見たい!
復活して欲しい!
 
強い情念が日本中の至る所で同じ幻覚を見させるのであろうか?
 
そして尚且つ燻り上がる『然し・・』『何故・・』に開かずの鍵が掛けられた
 
あれは『都市伝説』だよ。。
 
一言で頭から否定できる鍵は未だに有効なのである
 
それでは私が遭遇した丸の内線の女子高生達の会話は何だったんだろう?
 
まさか私にも鍵が掛けられる?
 
_幻聴ですよ!『都市伝説』ってヤツですよ!
 
言われたら私はムキになって反論出来るのだろうか・・
 
今日は奇しくも彼女がこの世に生を受けて45年目
 
私がバイク通勤を控えていたのは
毎日前を通った四谷の歩道が花で埋め尽くされていくのが
絶え難き悲しい情景だったからかもしれない・・